JR東海「リニア・鉄道館」のバックヤード探検記

リニア・鉄道館

公益社団法人日本電気技術者協会中部支部主催の「リニア・鉄道館のバックヤード見学会」に参加することができましたので、簡単にレポートします。

「リニア・鉄道館」は、名古屋駅からあおなみ線で24分の金城ふ頭駅(終着駅)下車、徒歩2分の場所にあります。

「リニア・鉄道館」のバックヤード見学ということで、博物館施設のバックヤードを期待していたのですが、建物のバックヤードということで受電設備と太陽光発電設備を見ることができました。

副館長さんから「リニア・鉄道館」の概要と入館者数の推移、元新幹線の運転士だったという係長さんからは主な展示品の解説を伺うことができました。

「リニア・鉄道館」の概要と入館者数の推移

「リニア・鉄道館」は東日本大震災の3日後の、2011年3月14日に開館ということで、盛大な開館セレモニーもなく、静かに開館したとのことです。それでも開館後は大変な人気で、初年度は年間入場者が100万人以上となったそうです。2017年5月には入館者数の合計が400万人を超えました。

入館者数の年齢比率は、大人が70%、小中高生が15%、幼児が15%で、両親が子どもを、祖父母が孫を連れて来館という構図が目立つとのことです。

「リニア・鉄道館」の展示品と入館者数対策

「リニア・鉄道館」は、東海道新幹線を中心に、在来線から超電導リニアまでの展示を通じて、「高速鉄道技術の進歩」を紹介しています。

「リニア・鉄道館」のシンボル展示室

入室すると、少し暗めの部屋に、過去、現在、未来の最速の車両が展示されています。インパクトのある展示となるよううに、演出されています。

C62形式蒸気機関車(最高速度129km/h)

「C62形式蒸気機関車」は、日本最大・最速の蒸気機関車で特急「つばめ」「はと」などで活躍しました。1954年狭軌鉄道の蒸気機関車としての世界最高速度129km/hを記録しています。

「C62形」の「C」とは、動輪の数を表し、「A」は1輪、「B」は2輪、「C」は3輪なんです。「C62形式蒸気機関車」は、たくさんの蒸気を発生させるための巨大なボイラ特徴です。車両展示室の在来線エリアに展示されている、「C57形式蒸気機関車」のボイラと比べてみてください。大きさの違いが体感できます。

955形新幹線試験電車(300X)(最高速度433km/h)

「955形新幹線試験電車(300X)」は、最新・最良の高速鉄道システムを追及するために開発された試験車両です。1996年、電車方式による当時の世界最高速度443km/hを記録しています。

「300X」は試験のみに使用された列車で、空気抵抗を減らすために、窓や扉の窪みや出っ張りがなく平らな構造になっています。

超電導リニアMLX01-1)(最高速度581km/h)

「超電導リニアMLX01-1」は、2003年、山梨リニア実験線において、当時の鉄道の世界最高速度581km/hを記録しています。

「MLX01-1」の扉は上に開きますが、現在の超電導リ二アの車両の扉は、新幹線と同じように左右に開きます。超電導リニアの車両は、正面に運転席の窓がありません。実は、超電導リニアは変電所からの制御で走行するので、運転士がいないのです。

「リニア・鉄道館」の車両展示室

入室すると、天窓から光が差し込む展示室に新幹線と在来線の展示品があります。左手は新幹線エリア、右手は在来線エリアとなります。

新幹線エリア

右から、0系21形新幹線、100系123形新幹線、300系322形新幹線、700系723形新幹線、奥には922形(T3)新幹線(ドクターイエロー)が展示されています。

100系新幹線は、0系新幹線の改良型で車両の構造は0系新幹線とほとんど変わらないのですが、車内の使い勝手が良くなるように改良されています。0系新幹線では車体のリベットの頭が出ていますが、100系新幹線では平らになっているとのことです。0系と100系新幹線ともに、車体は鋼製で直流モータを採用していて220km/h走行車両でした。

300系新幹線は、先頭車の形から通称「鉄仮面」と呼ばれているそうです。車体はアルミ合金製で軽量化され、インバータ制御の交流モータとなったことで、270km/h走行が可能となりました。先頭車の形状から、トンネルに入るときに振動が出てしまうという特徴がありました。

700系新幹線は、先頭車の形状を工夫し、トンネルに入る時の振動が少なくなるように改良されています。運転席窓に「C1」と書かれた車両は、客室を広くしたため運転席がたいへん狭くなってしまって、運転士は窮屈な思いをしているとのことです。100系新幹線の置き換え用として製造され、300系新幹線と同様に、車体はアルミ合金製で軽量化され、インバータ制御の交流モータを採用しており、285km/h走行が可能です。

「鉄道のしくみ」コーナーで、新幹線の運行システムの説明がありました。

新幹線の速度が220km/hから270km/hに向上したことで、列車運転密度が飛躍的にあがり、現在では1時間に「のぞみ」が7~8本、「ひかり」が2本、「こだま」が2本の運航ダイヤになっています。

その日の最後まで走っている新幹線は、「のぞみ」でも「こだま」でもなく、東京発名古屋行きの「ひかり」だそうです。

その他、新幹線の脱線防止対策と地震時の送電停止システムの説明をしていただきました。

在来線エリア

右から、ED11形電気機関車、モハ1形電車、モハ52形電車、クハ381形電車、奥にC57形式蒸気機関車、EF58形電気機関車などが展示されています。

入館者数対策

「リニア・鉄道館」のリピーター対策として、次のようなことが実施されています。

  • 展示品の入れ替え(現役の700系新幹線の展示)
  • 鉄道ジオラマの変更(名古屋駅の地下に「リニアの駅」を追加)
  • 企画展の実施(現在6回目の企画展「ドクターイエローの軌跡」を開催)
  • 各種イベントの開催

「リニア・鉄道館」建物のバックヤード

「リニア・鉄道館」の受電設備

「リニア・鉄道館」の受電設備は、屋上のキュービクルです。主な負荷が空調設備で契約電力量も620KWというのとで、高圧6,600Vの受電です。また、製造業などと違い、休館日なども設定されていてメンテナンスができるとのことで、1回線の受電となっています。

海が近いということで、塩害が心配されますが、キュービクルのフィルター以外は特別な塩害対策はしていないとのことです。漏電ブレーカの一部に塩害が見られたので、予防保全で最近すべての漏電ブレーカーを交換しているとのことです。

「リニア・鉄道館」の太陽光発電設備

「リニア・鉄道館」の太陽光発電設備は、「リニア・鉄道館」の屋上にあります。屋上一面を利用して、「リニア・鉄道館」の外観を損なうことが無いように、太陽電池パネルが水平に配置されています。水平といっても、「リニア・鉄道館」は外観上、屋上が2度傾斜しているので、太陽電池パネルも南東方向で北から南に2度下がる格好になります。

「リニア・鉄道館」の屋根に広がる太陽光パネルは、伊勢湾岸道から見ることができとのことなので、伊勢湾岸道を車で走る機会がありましたら確認してみてください。

太陽光発電の発電容量は498KWで、晴れていれば、館内で必要な電気のほとんどを太陽光発電でまかなうことができます。春と秋の空調設備をあまり必要としない時期は、電力会社に余剰電力を売電しているとのことです。