名古屋市営地下鉄東山線に電気を送る最新鋭の「名駅変電所」は、環境との調和と省エネルギー化を目指し、都市公園の地下に設置されていた!

名古屋市の地下鉄は、昭和32年11月の「名古屋」・「栄町」(現「栄」)2.4kmの開業から、順次路線の拡充がはかられました。現在では、東山線、名城線、名港線、鶴舞線、桜通線、上飯田線の6路線合わせて93.3kmの営業距離となり、地下鉄の利用者も1日134万人を数えるまでになりました。

名古屋市営地下鉄は、東山線、名城線、名港線、鶴舞線、桜通線、上飯田線の6路線を有していますが、最も開業が早く、利用者の多い路線が東山線(黄色)です。地下鉄を走らせるには電気が必要ですが、この電気は駅などの施設用(高圧)と電車の走行用(低圧の直流)の2種類があります。電気は、長い距離を送電すると、電圧低下が起こるため、地下鉄では、一定区間に「変電所」を設置することで、効率的に電気を利用しています。

名古屋市営地下鉄東山線では、昭和32年の地下鉄開業時から東山線を支えてきた「那古野変電所」が、平成28年9月に「名駅変電所」として都市公園の地下へ移転新設されました。今回は、環境との調和と省エネルギー化を目指して建設された「名駅変電所」を紹介します。

名古屋市営地下鉄の「名駅変電所」は、名古屋駅東の「西柳公園」の地下にあります。名古屋駅近郊の都心部に位置していることから周辺環境に配慮して、地下3階建てとなっていますが、地上の建物は出入口と給排気口のみとなっています。

環境面では、名古屋市交通局では初となる、非常用発電機の排気熱をミスト状の水で冷却し、地上の排気口から排出する方式が採用されています。また、省エネルギー化では、変電所内には冷暖房用の空調機器を置かず、送排風機の送風量で所内の温度を調節する方式を採用して、冷暖房機器の設置費や運転費用を削減しています。

 補足事項
「名駅変電所」は、常時、無人となっていて、設備の故障や点検時のみ職員が入所します。施設内には職員詰め所があり、職員が入所して詰め所を利用する場合のみ、詰め所の冷暖房を使用します。

それでは、「名駅変電所」の設備について紹介します。

33KV受電設備

「名駅変電所」は、中部電力から特別高圧の33KVを2回線受電しています。受電設備は「個体絶縁方式」を採用していて、断路器及び遮断器の操作機構にはBMA(バランス形電磁操作)方式を採用したことにより高い安全性と、保守性の向上が図られています。また、SF6ガスフリーとすることで環境調和型のスイッチギヤになっています。

整流設備

電車に直流の電気を供給するための変電所ですので「整流設備」があります。「名駅変電所」の整流器は環境保全を考慮して、高性能純水ヒートパイプ方式冷却器を採用しています。また、冷却器を縦型とすることで省スペース化が図られています。

直流き電設備

「名駅変電所」の直流遮断器は電磁保持式HSCBが採用され、整流器用、き電用など系統ごとに金属閉鎖配電盤に収納され、安全性が図られています。

高圧配電設備

東山線の駅などに高圧の電気を送る設備です。「名駅変電所」では、コンパクト化を図るため、真空遮断器、断路器などを金属閉鎖配電盤に合理的に配置しています。

主配電盤

主配電盤では、受変電設備の監視・制御・保護が行われます。「名駅変電所」では、各遮断器、断路器の入・切状態表示灯とスイッチ類が模擬母線上に見やすく配置されています。

非常用発電設備

停電時、駅設備に給電するためのディーゼル発電装置が設けられています。「名駅変電所」は都市公園の地下に設置されていることから、黒煙除去装置と排気冷却装置が付帯設備として設けられています。また、消音器も大きなものが設置されていました。

付帯設備

変電所付帯設備として、粉末消火設備、自動火災報知設備、換気設備、非常用発電機排気冷却設備等が設置されています。「名駅変電所」の特徴としては、所内の温度上昇を防ぐ方法として「冷房装置を設置するのではなく、換気設備(送・排風機及び制御盤)の換気量を調整することで対応している。」点と「ディーゼル発電装置からの排気熱を、排気冷却設備(水噴霧)を通して冷却し、排気する。」点が挙げられます。

(出典は名古屋市交通局・東山線「名駅変電所」のパンフレットより)

名古屋市営地下鉄東山線の「名駅変電所」は、都心部に設置された変電所として、「環境との調和と省エネルギー化を目指し、都市公園の地下に設置された。」すばらしい変電所です。