「名古屋市営地下鉄」名城線・名港線の改造車両、「2000形」の特徴を紹介

名古屋市の地下鉄は、昭和32年11月の「名古屋」・「栄町」(現「栄」)2.4kmの開業から、順次路線の拡充がはかられました。現在では、東山線、名城線、鶴舞線、桜通線、上飯田線の6路線合わせて93.3kmの営業距離となり、地下鉄の利用者も1日127万人を数えるまでになりました。

名古屋市営地下鉄では、東山線と鶴舞線の旧型車両を、新型車両に置き換える事業が進められています。鶴舞線では、開業当初から使用されている3000形車両を、N3000形車両に置き換える事業が進んでいます。東山線では、すでに、名古屋市営地下鉄で初めての冷房車両となる5000型車両を、N1000形車両に置き換える事業が完了し、ホームからの転落防止の効果が大きい、ホーム柵も設置され、ワンマン運転となっています。

名古屋市営地下鉄の名城線・名港線も2020年を目標に、ホームからの転落防止の効果が大きい、ホーム柵の設置が計画されています。名城線・名港線では、東山線を走行する「5050形」車両の兄弟車である「2000形」車両が使用されていますが、ホーム柵に対応するための改造工事が進められています。そこで、名古屋市営地下鉄の名城線・名港線を走行する「2000形」車両の特徴について紹介します。

「名古屋市営地下鉄」名城線・名港線の「2000形」車両のインテリア

名城線・名港線を走行する「2000形」車両は、平成元年の「世界デザイン博」開催を機に導入されました。Safety、Speedy、Sillentの3Sを基礎とし、当時の最新技術を導入して、省エネルギー、省メンテナンスを実現するとともに、乗客サービスの向上や居住性、快適性も追及されています。

車いすスペース、車内案内装置、連結部に設置した転落防止外ホロなどのバリアフリー設備の整備やオゾン層破壊の恐れのない代替冷媒を使用した冷房装置の搭載、座席部材のリサイクル素材の使用など、「人にやさしく、環境にやさしい」車両を目指して設計されました。

「2000形」車両の車体・室内

「2000形」車両の車体は、高張力ステンレス鋼を使用した、軽量オールステンレス構造となっています。東山線の「5050形」車両の兄弟車ですが、前面デザインが異なり、大型曲面ガラスが採用され、モダンですっきりとしたスタイルとなっています。

客室は、壁・天井をホワイト系に、座席・床はグリーン系にまとめられ、明るくすがすがしい感じになっています。専用の薄型クーラーの開発で、クーラー部の天井高を上げることができ、2連の大型窓の採用と相まって、小型の地下鉄ですが開放感のある室内となっています。

「2000形」車両の乗務員室

「2000形」車両の乗務員室は、大型曲面ガラスの採用とプラグイン式外開き構造の貫通扉を車体中央からずらして設置することにより、広い運転室スペースと視界の確保が図られています。運転台は横置きデスクタイプのバーハンドル式となっています。

「2000形」車両の車いすスペース

両先頭車両には、車いす使用者のためのスペースが設けられています。

「2000形」車両の車両間転落防止ホロ

「2000形」車両の車両間には、ホームから車両の連結部への転落防止を図るための「外ホロ」が設けられています。

「2000形」車両の非常通報装置

非常の場合、車内からボタンを押すことにより乗務員と通話ができるインターホン式の非常通報装置が、各車に設置されています。

「2000形」車両の車内案内表示装置

車内の車端部には文字パターン式、出入口上部には路線図式の案内表示器が設置されています。車内案内表示装置は、行先・次駅名・扉の開閉方向・名古屋市交通局からのお知らせなどの案内を、列車の運行に従い表示します。英文による表示も併せて行い、名古屋市の国際都市化にも対応しています。

「2000形」車両の主要機器

「2000形」車両の台車

「2000形」車両の台車は、構造の簡素化、軽量化、省メンテナンス化を図るため、ボルスタレス構造が採用されています。車輪は優れた防振・防音効果を有する「SAB形弾性車輪」が採用されています。基礎ブレーキ装置は、圧縮空気式ディスクブレーキとなっています。

「2000形」車両の主電動機

「2000形」車両の主電動機は、440V75KWの自己通風式三相かご形誘導電動機が採用されています。

「2000形」車両の制御装置

「2000形」車両の制御装置は、大容量GTOサイリスタを採用したVVVFインバータ制御で、1台で2両分8台の主電動機を制御します。ベクトル制御方式の採用により、よりきめ細やかな空転再粘着制御と高電圧領域における回生制御機能の改善が図られています。また、VVVFインバータ部、ゲート制御部、フィルタコンデンサを一体箱に納め、小型化と誘導障害の低減が図られています。

「2000形」車両の補助電源装置

「2000形」車両の補助電源装置は、大電力用パワートランジスタで構成する90KVAの三相静止型インバータが採用され、スナバロスを無くし、効率の向上、低騒音化、小型軽量化が図られています。

「2000形」車両の制動装置

「2000形」車両の制動装置は、NSC遅れ込め制御付きATC連動電気指令式電空併用ブレーキで、制御装置のゲート制御部にて回生ブレーキ力・応荷重圧等の演算を行い、必要な空気ブレーキ力を各車の作用装置に指令する方式となっています。

「2000形」車両の列車無線装置

「2000形」車両の列車無線装置は、複信式誘導無線装置の2重系構成が採用され、信頼性の向上が図られています。通常の送受話機能に加え、非常の場合には車両から電車線停電を行うことができる非常発報機能を持っています。

「2000形」車両の車上検査装置

「2000形」車両の車上検査装置は、制御装置、補助電源装置及び信号・ATC装置の自己検査部とデータリンクし、別置きの総合試験器を接続することにより、各装置の総合試験を行うことができます。また、各装置の故障情報を収集し、運転台のパネル表示器ガイダンスを表示します。

「2000形」車両の信号・ATC装置

「2000形」車両の信号・ATC装置は、無絶縁軌道回路による高周波連続誘導式の車内信号機付ATC装置で、受信部・速照部はデジタル処理方式の2重系構成となっており、小型軽量化・高信頼性が図られています。

「2000形」車両の電動空気圧縮機

「2000形」車両の電動空気圧縮機は、2段圧縮横形3気筒式のタイヤ形軸直結駆動方式となっていて、リード弁の採用と併せて低騒音化が図られています。電動機は交流誘導電動機で、保守性の向上が図られています。

「2000形」車両の冷房装置

「2000形」車両の冷房装置は、天井集約分散方式で、1両に14.6KWのユニットクーラー2台が装備されています。冷媒にはオゾン層破壊の恐れが無い、代替冷媒R407Cが採用されています。

「2000形」車両の主要諸元

(出典は、名古屋市交通局監修の「2000形車両」パンフレット)

ホーム柵に対応するための「2000形」車両の改造

「名古屋市営地下鉄」名城線・名港線で使用されている「2000形」車両は、導入から20年以上が経過しているので、ホーム柵に対応するためのATO搭載・ワンマン・ホーム柵対応改造に加えて、走行機器の更新も行われています。

機器更新は、「2000形」車両の兄弟車で、すでにホーム柵対応が完了した、東山線の「5050形」車両の内容に準じています。機器更新の主な内容は、次のようなものです。

  • VVVFインバータ制御装置の素子をGTOサイリスタからIGBTに更新
  • ブレーキ装置を純電気ブレーキ機能付きに更新
  • 補助電源装置に使用されている静止形インバータの素子をGTOサイリスタからIGBTに更新
  • 車上検査装置の更新
名古屋市科学館の関連展示
名古屋市科学館の理工館3階「技術のひろがり」の「街ではたらく機械ゾーン」に、「モノづくり都市パノラマ」や「電車」という展示品があり、名古屋の経済や交通をささえる、市営地下鉄やJR、名鉄などの車両も紹介されています。