名古屋市科学館の生命館南の屋外展示ゾーンで、国産初の海洋無人探査機「ドルフィン3K」を見つけました。「ドルフィン3K」は、独立行政法人・海洋研究開発機構が開発した国産初の海洋無人探査機です。高精細カメラやマニピュレータ(ロボットの腕や手に当たる部分)などが装備され、海上の船から遠隔操作します。
1987年(昭和62年)から2002年(平成14年)まで、日本近海や海洋調査のため576回潜航し、メタンハイドレートや天然ガスなどの資源調査、日本周辺で起きる地震調査、深海生物の調査など学術研究の上で貴重な情報をもたらしました。2003年(平成15年)からは、後継機のハイパードルフィンがその役割を担っています。
「ドルフィン3K」の開発秘話
「ドルフィン3K」のはじめの開発目的
海洋無人探査機「ドルフィン3K」のはじめの開発目的は、有人潜水調査船「しんかい2000」が何らかの原因で浮上が困難になった場合に救助の手助けをすることでした。
遠隔操作で細かな動きができる「ドルフィン3K」は、当時、国内最大で最も深い深度で活動できる海洋無人探査機でした。「ドルフィン3K」は、船上装置とビークル本体をテザーケーブルで接続する、ケーブル方式の遠隔操作型ビークルとして開発建造されたもので、最大3,300mまでの水深の海底で作業ができました。
ビークル本体は長さ3m、幅2m、高さ2m、重さ3.7t、これに上下、左右、前後に動かす6基の推進器が付けられています。ビークル本体には、3つのテレビカメラが付けられてますが、そのうちの一つは高感度で高品質の特殊なカメラが使われています。このカメラでとらえた物で試料として採取したいものがあれば、機械の手となる2本のマニピュレータを使って試料を採取し、船上に持ち帰ることができます。
テザーケーブルの開発
「ドルフィン3K」は、日本で初めての深海用の遠隔操作型ビークルであったので、これを吊り下げる長さ5,000m、直径30mmのテザーケーブルは新たに開発する必要がありました。
ビークル本体の動力は電動油圧式で、油圧供給用の電動機は出力40kw、2,250Vの三相誘導電動機が搭載されています。センサーは、前方障害物探査用と方位探知用のソナーを1基ずつ備えています。テレビカメラは、前方に超高感度のSuper HARPカメラとカラーCCDカメラ、後方に白黒カメラが取り付けられています。試料採取用として、ビークル前部に一対のマニピュレーターを備えています。
テザーケーブルは電動機の電源供給とセンサー、テレビカメラ、マニピュレータの通信を確保しながら、ビークル本体を支えて強力な潮流力にも耐える必要がありました。「ドルフィン3K」で使用されたテザーケーブルは、海洋研究開発機構と藤倉電線、三井造船の共同研究により開発された高強度の光ファイバーと電線の複合ケーブルです。また、光通信にはパルス符号変調(PCM)によるデジタル伝送方式が用いられ、無人探査機用としては当時世界に例を見ないものでした。
「ドルフィン3K」に興味を持たれた方は、理工館6階「最先端科学とのであい」の「地下へ挑む」ゾーンで「地下へ到達する”地球深部探査船「ちきゅう」”」の展示も必見です。