「リニア・鉄道館」で次期新幹線車両「N700S」の仕様を発見

N700S

先日、公益社団法人日本電気技術者協会中部支部主催の「リニア・鉄道館のバックヤード見学会」に参加しました。その時、車両展示室の新幹線エリアで、次期新幹線車両「N700S」の仕様を発見しましたので紹介します。

700系新幹線は、100系新幹線を置き換えるために開発された新幹線で、非常に完成度が高いのですが、さらに完成度を高めるための改良が随時行われています。そして、N700系以来のフルモデルチェンジとなる、時期新幹線車両(車両名称:N700S)に向けた、確認試験車(16両)の製作が決定されました。

次期新幹線車両「N700S」の仕様

次期新幹線車両「N700S」の「S」は、”Supreme(最高の)”を表します。現行の新幹線車両「N700A」と比較して、消費電力が7%削減される予定です。

技術開発成果による新技術の採用

安全・安定輸送の更なる向上と床下機器配置の最適化が行われます。

  • ATC及びブレーキシステムの改良で、地震時のブレーキ停止距離が「N700A」より5%短縮されます。
  • 台車振動検知システムの更なる機能向上により、重大事故防止と乗り心地の常時監視による品質の維持向上がはかられます。
  • 駆動システムに次世代半導体「SiC(炭化ケイ素)素子」が採用され、走行風冷却の技術の組み合わせにより、駆動システムの大幅な小型・軽量化が実現されます。

小型・軽量化による「標準車両」の実現

  • 小型・軽量化の徹底により、これまで以上に最適な車両の床下機器配置が可能となり、現在の8種類の号車種別を4種類の「標準車両」にすることができます。
  • 4種類の「標準車両」により、16両のみならず12両、8両等の様々な編成長の車両を、様々な線区に容易に適用させることが可能となります。
  • 4種類の「標準車両」の活用で、一層高品質な車両を低コストかつタイムリーに、国内外問わず提供可能となります。

環境性能の向上

「N700A」の形状(エアロダブルウィング形)を踏襲しつつ、三次元形状を考慮したシミュレーション技術を活用して進化させた先頭形状(デュアルスプリ―ムウィング形)を採用します。

この先頭形状により、トンネル突入時の騒音がさらに低減されます。また、車体の平滑化や形状の見直しにより、走行抵抗の低減化も図られます。

更なる安全・安定輸送の実現

車両機器の状態監視機能が強化され、運転状況、機器の動作状況、乗り心地レベル等の車両が記録したデータを地上側に大量に送信し、「車両分析センター」で詳細に分析することが可能になります。

快適性・利便性の向上

  • より制振性能の高い「フルアクティブ制振制御装置」(油圧ポンプで力を発生し動揺を打ち消す)がグリーン車に搭載され、乗り心地が向上します。
  • グリーン車だけでなく、普通車も含む全座席にモバイル用コンセントを設置し、モバイル環境がさらに充実します。
  • 大型・大容量のリチウムイオンバッテリーの採用により、これまで架線停電時において使用できなかったトイレが、一部号車において使用可能となり、異常時の利便性が向上します。

「N700S」は、まず確認試験車(16両)が2018年3月完成に向けて製作され、量産車は2020年度導入の方向で検討が進められています。2007年のN700系以来およそ13年ぶりの新型車両導入となります。

現在使用されている700系については、2019年度末までに順次廃車される計画です。その先頭形状から「カモノハシ」とも呼ばれているこの車両は、1999年3月に東海道新幹線へ登場し、それからおよそ20年で引退になります。