名古屋市科学館で「数学」の展示品を見るならここがおすすめ

理工館

科学館で純粋に「数学」を扱っているところは少ないのですが、名古屋市科学館もリニューアルされてから、「数学」の展示が見られるようになりました。「数学」の展示が見られるのは、名古屋市科学館の理工館4階「科学原理とのふれあい」の「数学」ゾーンです。「数学」ゾーンは、名古屋市科学館理工館4階の「北側の壁面」になります。

「数学」の展示品を見ることで、自然を数字で表すための単位、図形を用いると公式が理解しやすいこと、さまざまな曲線が物理現象に関係していること、自然の中にも数学であらわすここができる現象があること、直線を並べることで曲面ができることなどが理解できるようになります。

名古屋市科学館の理工館4階「科学原理とのふれあい」の「数学」ゾーン

自然を数字で表す

科学はさまざまな自然現象を解き明かしてきました。その中でさまざまな物理量をどのように表すのかはとても重要なことです。長さや重さといった単位がどのように定義されているのかを知ってもらう展示です。長さと重さの基本単位である、1mの長さと1kgの重さを感じてください。

1mという長さが地域によって違うとしたら、いろいろな面倒なことが起こりますよね。また、長さの単位がメートルだけでなく、様々な単位が入り乱れていたら、混乱します。単位をそろえるために、歴史上で非常に多くの努力がなされてきました。

 1875年、長さや重さなどの単位を国際的に統一するために、17カ国の代表によって「メートル条約」が締結されました。日本は1886年に条約に加盟しました。メートル条約に基づき「国際度量総会」が開かれ、これまでに様々な単位に関する取り決めがなされてきました。 度量衡(どりょうこう)とは、長さ・容積・重さのことです。

1960年の第11回 国際度量衡総会において、国際単位系(SIと略します)を採択しました。SIは7つの「基本単位」と基本単位を組み合わせた「組立単位」からなります。

7つの基本単位は、長さ:メートル(m)、質量:キログラム(kg)、時間:秒(s)、電流:アンペア(A)、熱力学温度:ケルビン(K)、物質量:モル(mol)、光度:カンデラ(cd)です。

公式と図形

円周率π(パイ)や三平方の定理(ピタゴラスの定理)について図形を用いて理解する展示です。円の面積が三角形の集まりで求められることや、三平方の定理は直角三角形のみで成り立つことが理解できます。

三平方の定理はピタゴラスの定理ともいわれ、「直角三角形の斜辺の平方は、他の二辺の平方の和に等しい。」というものです。

円周率はギリシャ文字のπ(パイ)で表されます。円周の長さを直径で割った数です。

物理現象に見る数学

曲線には様々なものがあります。小中学校で習うものでも、円や放物線や双曲線などがあります。様々な曲線の中で、物理現象が関係するいくつかの曲線が紹介されています。

サイクロイド曲線

「サイクロイド曲線」は、直線上を円が転がるときに、円のある一点が描く曲線です。この曲線を上下逆さまにしたものが、展示品のボールを転がす坂道の形です。この坂道の特徴は、ある位置から別の位置(最初よりは低い位置)まで、もっとも短時間で行くことができるということです。 また、サイクロイド曲線の坂道はどの位置からボールを転がしても、一番下まで行く時間が同じになる特徴があります。

自動車を一定速度で走らせながら、ハンドルを同じ速度で回していった時の車の通り道が「クロソイド曲線」になります。 高速道路のランプウェイなど、多くの道路でクロソイド曲線が取り入られています。

放物線

「放物線」は文字通り、物を空中に投げたときの通り道です。また、噴水で水が山なりになっている曲線が放物線です。衛星放送の電波をとらえるためのパラボラアンテナの曲面も放物線です。放物線や放物面は軸に平行にやってきた光や電波を反射させると、ある一点に集める性質があります。パラボラアンテナはそうやって電波を集めます。

カテナリー曲線

電柱と電柱の間の電線は重力に引かれてたわんで曲線を描いています。ロープやひも、鎖などの両端を持って引き上げたときに、ロープが描く曲線が「カテナリー曲線」です。従って、懸垂(けんすい)曲線とも言われます。 カテナリー曲線は、材質が持つ強さを最大限に引き出せるため建築や橋などに使われています。

自然現象に見る数学

自然の中には、少し特徴的な数学で表すことのできる現象があります。ひまわりの種のらせん構造や、複雑に入り組んだ海岸線、蜂の巣の構造などに、どのような数学が関係しているのでしょうか。

 フィボナッチ数

「 フィボナッチ数」とは、最初に1と1があり、その後は前2つの数字を足した数というものです。具体的には、1、1、2、3、5、8、13、21・・・・・と続く数字です。
ヒマワリの花の中で、種の並びは渦巻模様になっていて、その渦巻の腕の本数がフィボナッチ数になります。他にも松かさやパイナップルの鱗片(りんぺん)も渦巻模様になっていますが、その腕の本数もフィボナッチ数になります。

フィボナッチ数は、大きなフィボナッチ数になるほど、隣り合う2つの数の比が一定の値に近づき、極限値(どこまでも数を大きくしていった時の値)は黄金比になります。黄金比とは最も美しいと言われる数の比(およそ1:1.6)です。

フラクタル

木の枝が樹木全体の形に似ていたり、複雑に入り組んだ海岸線が、一部分と、もっと大きな面積とを見比べたときに形が似ていたりするような、図形の部分と全体が相似になっているものを「フラクタル」といいます。

フラクタルは数学の概念なので厳密な意味では自然界にフラクタルは存在しませんが、よくあてはまる例として、人や動物の血管の分岐構造や肺の構造、山岳地形など自然界のあらゆるところに見出されます。

充填(じゅうてん)図形

「充填(じゅうてん)図形」は、 平面や空間を、一種類あるいは数週類の図形や立体だけで埋めつくすことができます。そのような図形を自然物の中に見ることができます。正六角形がすきまなく並んだ蜂の巣はその典型的なものです。玄武岩の柱状節理(ちゅうじょうせつり)も六角形がすきまなく並んでいます。

直線がつくる曲面

直線を並べることで曲面ができることを紹介しています。横一列に並べれば平らな面ができることは直感で分かりますが、なかには直線からできているようには見えない曲面もあります。

双曲面

茶筒の形に代表される円柱を、直線でつくるのは簡単です。円の周に沿って直線を縦に並べれば円柱の胴ができあがります。
円柱の底面と上面は円の形をしています。円柱の場合、直線は上の円と下の円を真っすぐにつないでいます。次に、上の円からの直線を真下に降ろすのではなく、下の円のうち、真下から円周にそって少し回った位置に降ろします。すべての直線を同じように少しひねった位置に落とします。そうすると胴の形が変化します。中間がくびれた双曲面という形になります。できあがった形を見ると、直線で作られた面には見えません。

展示品では双曲面の形だけでなく、円柱から双曲面に変化していく動きを見ることができます。展示品の一本一本の糸を見ると、双曲面は直線からできているのが分かります。 展示品の双曲面の形は、正確には「一葉回転双曲面」といいます。

兵庫県の神戸市の港にある神戸ポートタワーがこの形をしています。真っすぐのパイプで作られていますが、全体では双曲面の形をしています。

双曲放物面

碁盤の目は縦と横の直線でできています。碁盤の目をゴムに置き換え、碁盤の3つの角はそのままの位置にして、1つの角だけをまっすぐ上に持ち上げるような動きをすると、平面であった碁盤の目が、曲面になります。ただし、ゴムは伸び縮みはするけれど、たるんだりせずに、ぴんと張ったまま、つまり直線のままであるという条件がつきます。

出来上がったこの面を双曲放物面といいます。展示品では平面から双曲放物面へと変化する動きを見ることができます。やはり、一本一本のゴムは直線のままであることを確かめてください。

展示品と同じ形の枠をシャボン液につけたときにできるシャボン膜も展示品と同じ双曲放物面になります。