名古屋市科学館の「プラネタリウム」のひみつ

名古屋市科学館

プラネタリウムドームの直径のひみつ

名古屋市科学館のプラネタリウムはギネスにも登録されている世界最大の直径35mのドームが話題となっていますが、それは世界最大のドームを作ることが目的ではなく、限りなく本物の星空を再現するには大きくせざるを得なかったというのが真相のようです。無限に広がる宇宙を表現するには無限に広がる平面が必要ですが、それでは建物として成り立ちません。となると平面に近い均等な投影面を確保するには、できるだけ大きな球体が必要になります。当初はできるだけ大きい球体がベストということで、直径50mなどという構想もあったようですが、敷地面積、高さ、予算などの制約もあり直径35mに落ち着いたようです。

直径35mのプラネタリウムドームのギネス世界記録登録のひみつ

ギネス世界記録の登録は、登録申請時に有料オプションとして認定までの期間を早めたり認定員を派遣していただける、松・竹・梅のようなコースがあるそうです。松コースではTVのギネス認定番組で見るようにギネス認定員がその場でギネス認定するようですが、公共施設である名古屋市科学館は当然の梅コース申請なので、新館が開館してから認定まで9か月の長期間を要したようです。

「星のまたたき」まで再現した光学式プラネタリウム投影機のひみつ

名古屋市科学館の学芸員さんの本物の星空へのこだわりはプラネタリウムドームだけではありません。標準仕様のプラネタリウムの投影機では「星のまたたき」が表現できないと、ドイツのカールツァイス社まで出向きプラネタリウムの投影機を調整したとの逸話もあります。どおりでプラネタリウム投影機の仕様が「名古屋市科学館要覧」では、「光学式プラネタリウム(ユニバーサリウムⅨ型(名古屋市特別仕様))」となっています。

臨場感のあるプラネタリウムのひみつ

名古屋市科学館のプラネタリウム本器、実は光ファイバーを使用した「光学式プラネタリウム」とプロジェクタを使用した「デジタル式プラネタリウム」の2基で構成されています。「光学式プラネタリウム」は「星のまたたき」まで表現できるクオリティーのもの、「デジタル式プラネタリウム」はプラネタリウムドーム内にコンピュータで計算された正確な星空を投影できるクオリティーを備えています。

全天動画システム

「デジタル式プラネタリウム」( スカイマックスDSⅡ)は、星空だけではなく、6台の大型プロジェクターでドーム全体にフルハイビジョンの約8倍ものサイズのコンピューターグラフィックス映像を投影することができます。「デジタル式プラネタリウム」を使えば、星々の間を抜けて未来へ向かう「宇宙旅行」の映像などを体験できます。プロジェクターは光や音漏れを防ぐため、客席から見えない位置に設置されているそうです。

デジタルパノラマシステム

地平線付近の風景を、360度の高精細なパノラマ画像で映し出すことができる「デジタルパノラマシステム」が設置されています。このシステムで 昼間や夕暮れ時の景色などを投影しています。歪みのない映像を360度つなげるために、ドーム中央から外向きに16台プロジェクターが均等間隔で設置されています。

全天動画システムとパノラマシステムは一体となっていて、全天動画システムの6台の大型プロジェクターとデジタルパノラマシステムの16台のプロジェクター群が40台以上のコンピューターで制御されています。

音響システム

プラネタリウムドーム内で音を出すスピーカーの多くは、穴あきのアルミ製パネルであるドームスクリーンの後ろ側に設置されています。球形のドームは反響が出やすく、観覧者の席の位置も中央寄りとはいえかなり広い範囲になります。すべての座席に正確できれいな音を届けるには、たくさんのスピーカーから出る音をすべての座席で心地よく聞こえるようにコンピュータで制御するシステムが必要です。名古屋市科学館のプラネタリウムは専用に設計された音響システムにより、解説者の声や音楽が自然に聞こえるようになっています。

これだけの装置がそろって初めてクオリティーの高いプラネタリウムが実現できるのですね。

プラネタリウムのクオリティーのひみつは、解説者と調整室の二人三脚で実現

名古屋市科学館のクオリティーの高いプラネタリウムは、プラネタリウムドーム内で解説をする学芸員さんだけで実現しているのではありません。実はプラネタリウムドームの外にプラネタリウム内の映像や音響をコントロールする数十台のコンピュータを有した調整室があります。プラネタリウム投影中の機器監視と不測の事態に備えるために、そこにも調整室を担当する学芸員さんがいます。過去には実際にプラネタリウムの投影中に映像が出なくなるトラブルが発生し、プラネタリウムドーム内の解説担当の学芸員さんがアドリブで解説をつないでいる間に調整室の学芸員さんが機器の不具合を直し、無事にプラネタリウムの投影を終了できたこともあったそうです。

ベストコンディションで臨むプラネタリウム機器のひみつ

名古屋市科学館のプラネタリウムは現在も土・日・祝日は午前中に入場券が完売となるようです。人気の高さがうかがえます。人気にあやかってというわけでもないと思いますが、これほどの人気ですから機器の故障でプラネタリウムが開演できないという事態になると深刻です。名古屋市科学館の天文の学芸員さんは機器の故障と映像や音声のクオリティには神経を使っています。「名古屋市科学館要覧」をみると、新館のプラネタリウムもまだ5年ですが、プラネタリウムのクオリティーが低下しないように映像や音響機器、それらを制御するコンピュータを1億5千万円をかけて機器更新しているようです。これもプラネタリウムの人気のたまものでしょうか。