名古屋で安定した電力供給に欠かせない中部電力の「超高圧変電所」は、都市公園内という意外なところにつくられていた!

私たちが生活するうえで、電気は欠かせないものです。電気は、山奥の水力発電所や海岸近くの火力発電所や原子力発電所などで発電されるため、電気の使用量が多い都市部までは送電線を利用して電気が送られます。送電線には電気抵抗があるので、送電線での電力損失を少なくするためには、都市部まで、できるだけ高い電圧(50万ボルトや27万5千ボルトという超高圧)で電気を送る必要があります。

電気を利用する工場やビル、店舗や住宅では超高圧の電気は危険なので、高圧や低圧の電気を利用しています。このことから、都市部には、超高圧の電気を高圧や低圧の電気に変換する変電所が必要になります。超高圧の変電所を建設するには広い土地が必要です。都市部では地上に広い土地を確保することは困難ですが、地下ならば広い土地を確保できる場合があります。

今回は、都市公園の地下にある変電所としては、全国で2番目という、中部電力株式会社の「名城変電所」を見学する機会がありましたので、概要を紹介します。中部電力株式会社の「名城変電所」は、地下変電所というだけでなく、周囲の環境に溶け込んだ外観と、変電所には欠かせない電力ケーブルの運搬にもユニークな方法が考案されていました。

(中部電力株式会社「名城変電所」パンフレットより)

中部電力株式会社の「名城変電所」は、名古屋城の南にある「名城公園正門前駐車場」の地下32mにあります。広さは縦と横が90mで、地上と地下1階、2階が駐車場として利用されていて、「名城変電所」は地下3階、4階、5階部分にあります。

(中部電力株式会社「名城変電所」パンフレットより)

「名城変電所」は、超高圧の27万5千ボルトの電気を15万4千ボルトに下げる変電所です。名城変電所の施設として、地下3階には「ガス絶縁開閉装置室」、地下4階には「ケーブル処理室・制御室」、地下5階には「主要変圧器室・リアクトル室」があります。

中部電力株式会社「名城変電所」の3つの特徴

中部電力株式会社「名城変電所」の特徴は、次の3つです。

  • 都市公園の地下に設置されている。
  •  環境と景観の調和が図られている。
  •  主要設備の不燃化とコンパクト化が図られている。

都市公園の地下に設置

都市公園の地下にある変電所としては、全国で二番目、広さが縦と横が90m、深さが32mということで、ちょうど中に名古屋城が入る大きさです。都市公園の中での建設工事ということで、工事中でも公園の景観を損なわないように、地下32.5mまで掘削するのに、上の階から下の階へと順番につくっていく「逆打(さかうち)工法」が採用されました。「逆打(さかうち)工法」により、型枠の再利用によるコストダウンと、工期の短縮が図られました。また、掘削土の搬出を、地上に設けた仮設の防音ハウス内で行うことにより、周囲への騒音や粉塵などによる環境への影響を最小限に抑えています。

環境と景観の調和

変電所地上部分の給気・排気塔やエレベータ塔屋は、瓦屋根に漆喰調の白壁や石積みといった和風の建物となっています。隣が名古屋能楽堂ということもあり、名古屋城を含む周辺環境のイメージを損なわないように配慮されています。建物の高さも、名古屋能楽堂の南にある、「加藤清正像から名古屋城を望む(ビスタラインというそうです。)」時に、視界を遮らない高さとなるように設計されています。

(中部電力株式会社「名城変電所」パンフレットより)

主要設備の不燃化とコンパクト化

地下の変電所ですので、主要機器はコンパクトで不燃性の高いものが求められます。開閉装置は、絶縁性能が空気の3倍で不燃性の「六フッ化硫黄ガス(SF6)」を封入した機器になっています。
変圧器は、高い冷却性能と絶縁性能を有する、「パーフルオロカーボン(PFC)」液と「六フッ化硫黄ガス(SF6)」を組合わせた不燃変圧器となっています。

(中部電力株式会社「名城変電所」パンフレットより)

電力ケーブルの敷設工事

地下に敷設する電力ケーブルは、「洞道」と呼ばれるトンネルを掘り、道路に搬入口を作る工事を行ってから、トラックで運ばれた電力ケーブルを道路上から搬入していました。

「名城変電所」では、何と、ケーブル運搬用の船を新造し、堀川を使って搬入したそうです。堀川は小さな川なので、干満の差で水位が変わり、満潮時にはケーブル運搬船と川にかかる橋との隙間が小さくなるので、干潮時に橋下を通過するように、電力ケーブルの搬入スケジュールを調整したそうです。

(中部電力株式会社「名城変電所」パンフレットより)

この方法により、今までの3倍の長さの1,800mのケーブルを運ぶことができ、道路工事の必要もないので、工期の短縮と費用の節約が実現しました。長いケーブルなので、ケーブル接続点が減少したことによる工期の短縮と費用の節約ができるとともに、接続点減少によるケーブルの信頼性も高まりました。

名古屋市周辺の送電系統

これまで、名古屋周辺で超高圧の27万5千ボルトを15万4千ボルトに変圧する変電所は、「東海変電所」、「松ケ枝変電所」の2つでしたが、「名城変電所」が建設されて3つとなり、名古屋市内への27万5千ボルトの超高圧電力系統は、西尾張変電所からの「西ルート」、猪高変電所からの「東ルート」、新名古屋火力発電所と知多第二火力発電所からの「南ルート」が結ばれ、名古屋市とその周辺地域へ安定した電力を供給することができるようになりました。

(中部電力株式会社「名城変電所」パンフレットより)

名古屋市科学館の関連展示
名古屋市科学館の生命館3階「生活のわざ」、「家と都市」ゾーンに、「都市の地下」という展示品があり、共同溝などの地下施設について展示と解説があります。
電力ケーブルや光ファイバーケーブルの展示もありますので参考にしてください。