東邦ガスが、名古屋市営地下鉄・名港線の港区役所駅の近くに「みなとアクルス」という、「環境と省エネの取り組みによる先進的なまちづくり」をコンセプトとしたスマートタウンを建設しています。「環境と省エネの取り組みによる先進的なまちづくり」を進めるということで、名古屋市の「低炭素モデル地区認定」の第1号となりました。
建設地は、東邦ガスの港明工場の跡地で、広さはナゴヤドーム6個分の33haもあります。ガス製造工場の跡地ということで、東京の豊洲市場の件が心配されますが、名古屋市環境事業局の指導の下で土壌汚染対策は万全を喫したとのことです。
「みなとアクルス」内には、三井不動産の商業施設「ららぽーと」(4階建で2018年秋にオープン予定)や三井不動産レジデンシャルの集合住宅が約500戸建設されるなど、魅力的なゾーンになりそうです。
今回、「みなとアクルス」の心臓部となる、エネルギーセンターを見学する機会がありましたので、概要を紹介します。
「みなとアクルス」の概要
「みなとアクルス」の開発コンセプト
「みなとアクルス」の開発コンセプトは、「人と環境と地域のつながりを育むまち」です。
- 環境と省エネルギーへの取り組みによる先進的なまちづくり
- 地域防災に資する災害に強いまちづくり
- 多様な人々が集い交流するにぎわいのあるまちづくり
「みなとアクルス」というまちの名称の由来
みなとアクルスは「AQUA」「LINK」「SMART」の頭文字を使った造語です。
- 「AQUA」は、運河や自然に親しみ、こころ潤うまち
- 「LINK」は、人と人、人と地域をつなぐ、笑顔柵まち
- 「SMART」は、スマートエネルギーを実現する、進化するまち
を意味していて、まちづくりに向けた取り組みを表しています。
「みなとアクルス」の計画概要
建設用地内を東西南北の4つの地区に分け、外国の方でも、地区名の頭文字で東西南北(EWSN)が判るように配慮されています。東地区は「エンジョイゾーン(E)」、北地区は「ネクストライフゾーン(N)」、西地区は「ウイルゾーン(W)」、南地区は「スポーツゾーン(S)」と呼ばれています。
「エンジョイゾーン(E)」には、商業施設「ららぽーと」や「エネルギーセンター」があります。ネクストライフゾーン(N)」には、7~10階建ての集合住宅が建設されます。「ウィルゾーン(W)」には、東邦ガスの「エコステーション」、「防災活動拠点」が建設されるとともに、研究開発・教育・医療・福祉などの「複合業務施設」の誘致が計画されています。「スポーツゾーン(S)」には、ゴルフ練習場「邦和ゴルフ」や既設の「邦和スポーツランド」などがあります。
「みなとアクルス」の緑豊かな都市空間の創出
- 駅そば生活圏800mに位置し、都市機能を集積させた「駅そば生活」が実現します。
- 地区内に快適な歩行空間・自転車走行空間が整備されます。
- 中川運河沿いには親水空間が設けられ、地区全体で豊かな緑陰空間が形成されます。
「ささしまライブ24」から「名古屋港」まで運行が計画されている、中川運河の観光船は、途中の「みなとアクルス」にも寄港する予定ということで、すでに中川運河から分岐する港北運河に浮桟橋が設置されています。
「みなとアクルス」のエネルギーセンター
「みなとアクルス」の心臓部となる「エネルギーセンター」は、先進的なエネルギーシステムによるスマートタウンの構築に欠かせないものです。「みなとアクルス」では、スマートネットワークが構築され、熱・電気の双方で創エネ・畜エネ・省エネが統合的に制御され、低炭素性・経済性に優れたエネルギーシステムが実現されています。
「エネルギーセンター」の活用で、一次エネルギー量の40%削減、CO2排出量の60%削減を達成できる見込みです。
「みなとアクルス」エリア内の自営線による電気の特定供給
「みなとアクルス」エリア内の電気は、コージェネレーションシステムや太陽光の発電電力とバイオマス発電電力を系統電力と併せて、自営線(自社で整備する電線)で各施設に供給されます。エネルギーセンターで発電する電力で、エリア内の電力需要の約半分がまかなわれます。
「みなとアクルス」を総合的に管理するCEMS(コミュ二ティ・エネルギー・マネジメント・システム)の導入
コージェネレーションシステムによる熱・電気供給やエネルギー利用情報などのネットワークを構築し、エリア全体でエネルギー管理を一括して行う「CEMS」が導入されました。
- 外部電力の安定的受け入れのための需給コントロール
- 熱電供給における省コスト・省エネ・省CO2効果の最大化のための運転計画の立案
- 各施設のBEMS,MEMS-HEMSとの連携による、地域内の需要変動を反映した最適制御運転
- 災害時にも需給バランス制御により供給の安定化(エネルギーセキュリティの向上)
「みなとアスクル」のエネルギーセンターの肝は、電力や熱源を供給する、種類の違う、複数の機器を設置し、天候や需要家の電力需要を、CEMSを使って細かく計算することにより、最も低コストで効率的なエネルギー供給ができるように、機器を運転管理することです。
「みなとアクルス」で導入された先進技術
- CO2フリー電力の調達:外部から木質バイオマス発電電力を24時間一定量受け入れ。
- NAS電池(大型蓄電池)の導入:夜間の余剰電力を蓄電し、昼間のピークカットに活用。太陽光発電と組合せ、出力変動などの需給調整や電力品質の安定化を図る。
- バイナリー発電機の導入:余剰排熱の有効利用で、排熱利用率が約7%向上。
- 運河水利用ヒートポンプの採用:運河水の温度差利用により、熱源機器の一次エネルギーを約20%削減。
「みなとアクルス」の地域防災
「みなとアクルス」の開発エリア内の取組み
- 大規模地震に備えた各施設の耐震設計、重要施設エリアの液状化対策(地盤改良)
- 津波浸水想定を踏まえた用地の嵩上げ造成と建物側での対応(重要施設の2階以上の設置など)
- 災害時のエネルギー供給の継続(エネルギーネットワーク、都市ガス中圧A導管、運河水・井水による冷却水の確保)
都市ガス中圧A導管は、東日本大震災時にも都市ガス供給が継続されたガス管です。
「みなとアクルス」と地域との連携
- 津波避難ビルの設置(商業施設駐車場棟とエネルギーセンター屋上で約9,000人収容可能)
- 災害時の被災者への物資供給(商業施設テナントへ協力要請)
- 港区役所への停電災害時の非常用電源供給
港区役所にも災害時に備えて非常用発電機を備えていますが、バックアップとして「みなとアスクル」のエネルギーセンターから電源の供給を受けられるようになりました。