「ボーリングコア」は生もの?名古屋市科学館で「ネタケース」に入った「ボーリングコア」を見てみよう!

名古屋市科学館は、ギネス世界記録に認定された世界最大の直径35mのドームに設置されたプラネタリウムを始め放電ラボや極寒ラボなどの大型展示が目を引きますが、その他の展示物も200点以上もあります。

名古屋市科学館の理工館6階は、「最先端科学とのであい」という展示テーマで展示品が配置されていて、宇宙開発・地下環境・地球温暖化などに関する最新の科学について知ることができます。

名古屋市科学館の理工館6階の「地下へ挑む」ゾーンでは、地下の構造を調べる方法について紹介されています。地下から地球を解き明かす方法として、「ボーリングコア」の採取がありますが、ここでは、地下深部から取り出した岩石や地層から、どのようにして地下の構造を読み解くのか「ボーリングコアステーション」を中心に解説されています。

「地下へ挑む」ゾーンには様々な「ボーリングコア」が展示されていますが、一番フレッシュな「ボーリングコア」は何と、お寿司屋さんで見かかる「ネタケース」のような容器に入っているではありませんか。「ネタケース」に入っている「ボーリングコア」は、「南海トラフ」の海底下537.8mから掘り出した本物で、本物の「ボーリングコア」は温度管理ができる容器に入れて展示するのだそうです。

「ボーリングコア」が入っている容器は低温なので、湿気の多い梅雨時などは展示ケースの表面が結露して見づらくなっている場合があります。その時は科学館の方に一声かけて、展示容器の表面を拭いてもらってください。

理工館6階の「地下へ挑む」ゾーンにあるネタケースに入った「ボーリングコア」の展示品

理工館6の「地下へ挑む」ゾーンは、地球の「層構造」「地殻」「マントルと核」「地球の材料」、地下へ到達する「地球深部探査船(ちきゅう)」、地下から地球を解き明かす「ボーリングコア」「地震観測網」、地下環境を利用する「ジオプロジェクト」などが紹介されています。

「ボーリングコアステーション」では全国で採取された「ボーリングコア」を見たり、「ボーリングコア」に含まれている成分などの分析ができます。「ボーリングコアステーション」の奥には、最新の「ボーリングコア」がお寿司屋さんにある「ネタケース」のような容器に入れられて展示されています。最新の「ボーリングコア」は時々入れ替えが行われるので、新しい「ボーリングコア」に出会えたらラッキーです。

 【地層から過去を解き明かす】
まずは、名古屋市科学館の地下のボーリングコアを見てみましょう。一番上の層には、融けたガラス瓶が含まれています。つまり、その地層ができたときにガラス瓶が存在し、それが融けるほど高温になったことがわかります。これは戦災を示している遺物と言えます。その下の地層は、主に中世頃の地層だと考えられています。それは当時の焼き物などが見つかるからです。その下は古墳時代。そのまた下は縄文時代です。このように、古い時代から順に積み重なっている地層を調べるということは、埋もれた遺物から過去を推定することなります。
【小さな化石が役に立つ】
化石は過去を知る有力な手がかりですが、わずか直径数センチのボーリングコアに大きな化石が入っていることは稀です。そこで、有効なのが「微化石」です。微化石は、顕微鏡を使わないと見えないくらい数ミリ以下の小さな化石のことで、有孔虫、珪藻、放散虫などのプランクトンの殻や、花粉、胞子などがあげられます。普通の化石よりも、少ない試料から大量の標本を得ることができるので、ボーリングコアの研究ではたいへん重要です。
多くの微化石は、広範囲に分布するうえに、短期間で形態や種が変化していることがわかっており、そのような種類の微化石が見つかれば年代が決定できます(示準化石)。また、プランクトンや花粉などは種類によって生息環境が違いますので、当時の環境(気温・水温・塩分など)を知ることができます(示相化石)。さらに、微化石に含まれる酸素同位体を用いて当時の気温を推定することもできます。
【境界部がおもしろい】
地下の物質は堆積物(岩)ばかりではありません。マグマが固まった岩石(火成岩)や高温高圧で再結晶した岩石(変成岩)もあります。でき方がちがう岩石や堆積物が接していれば、そこに時代のギャップがあることを示しています。たとえば、火成岩と堆積岩が接していれば、マグマが固まった後に冷えてからその上に土砂などが堆積したか、堆積物が固くなってからマグマが入り込んできたか、あるいは岩盤が断層でずれたかの可能性があります。でき方が違う岩石が接している境界部分は、過去の何らかの現象の記録ですので、科学者の興味がそそられる部分です。
【いろいろな分析を通して地下を調べる】
調査目的に応じていろいろな分析も行われます。岩石を研究する場合、偏光顕微鏡で観察してみるのが基本です。どのような鉱物が含まれており、どのような組織をしているのか分かります。場合によっては、どんな成分がどのくらい含まれているか分析することもあります。岩盤の強さや地下水の通りやすさを調べるためには、空隙率、粒度、割れ目頻度などが測定されます。ボーリングコアは普通では見られない地下のことを調べる貴重な試料なのです。
ボーリングによってできた穴には、地下水位計や地震計などを設置し、地下環境の状態をモニタすることもあります。坑内に湧き出た地下水を採取して、湧出量や溶けている成分を調べる場合もあります。これら様々な測定・分析によって、地下に記録された過去の記録や現在の地下環境の状態が研究されています。
(名古屋市科学館公式ホームページの展示品解説より)