日本初の純国産ロケットエンジン「LE-7」が、名古屋市科学館のエントランスホールに展示されています。「LE-7」ロケットエンジンは、宇宙開発事業団が、航空宇宙技術研究所、三菱重工業、石川島播磨重工業とともに開発した、「H-IIロケット」の第1段用液体ロケットエンジンです。
「LE-7」ロケットエンジンは、日本の技術のみで開発された、液体水素と液体酸素を燃料とする非常に効率のよい高性能エンジンです。現在は、「LE-7」の設計を元にコストダウンしつつ信頼性の向上を図った「LE-7A」ロケットエンジンが、「H-IIAロケット」では1基、「H-IIBロケット」では2基、各ロケットの1段目に使用されています。
二段燃焼方式
大きなロケットを打ち上げるには大量の燃料を効率よく燃やす必要があります。「LE-7」エンジンでは、スペースシャトルのメインエンジンに採用されたのと同じ、二段燃焼方式が採用されました。二段燃焼方式は、プリバーナーと呼ばれる予燃焼室で燃料の一部を先に燃やし、その燃焼ガスでターボポンプを駆動して燃料を加速・加圧させ、主燃焼室で燃焼させて推進力を生み出します。
この方式は燃焼効率は良いのですが、エンジンの配管などに高温・高圧部分が多いため技術的に難しく、「LE-7」の開発においてもトラブルが続出し、開発期間が幾度となく延長されました。しかし、問題点を一つずつ解決して、日本の技術のみで、世界のトップレベルの高性能エンジンを完成させました。
H-IIロケット
「H-IIロケット」は大型衛星を低コストで、しかも高い信頼性を保ちながら打ち上げるという要請に応えて開発されました。また、それまでの日本のロケットは外国の技術が一部に使われていたために、ロケットの使い方に制限がありました。しかし、全ての技術を日本で開発した「H-IIロケット」を持つことにより、日本独自の宇宙開発を進めることができるようになりました。
地上約3万6千キロメートルの軌道を回る静止衛星ならば重さ2トン、もっと低い軌道ならば10トンまでの衛星打ち上げが可能です。「H-IIロケット」は、本体部分の直径が4m、高さが50メートル、重さは260トンもあります。
展示されているエンジン「LE-7」が、そのメインエンジンです。ロケットの両脇に取り付けられた2本の固体ロケットとメインエンジンによって、地上から一気に「H-IIロケット」を持ち上げ宇宙に飛び出させます。
「H-IIロケット」の初号機は、軌道再突入実験機と性能確認用ペイロード(貨物室)を搭載して、1994年2月4日に種子島宇宙センターから打ち上げら、すべてのミッションが成功しました。
1999年11月に打ち上げられた8号機まで、「H-IIロケット」は合計8機が製造されました。