日本最大の打ち上げ能力を持つ宇宙ステーション補給機用液体燃料ロケットは、「H-IIBロケット」です。「H-IIBロケット」の実物大の展示品を、名古屋市科学館の屋外展示ゾーンで見ることができます。「H-IIBロケット」は、名古屋市科学館の展示品の中では最も大きく、直径5.2m、長さは50mにもなります。
この展示品は、構造試験に使われた試験用の機体で、第1段エンジン部、第1段液体水素タンク、第1段中央部、段間アダプター、フェアリングが試験に使われた実機で、それ以外は展示用に製作したものです。打ち上げる時の「H-IIBロケット」はこの他に2機のメインエンジンと4本の固体ロケットブースターなどがつきます。
内部構造が見られるようにタンク部分が切断してあるので、軽くて丈夫なロケットにするためのハニカム構造(蜂の巣状)が確認できます。本物のロケットの大きさと構造を間近に実感できる逸品です。
「H-IIBロケット」の構成
「H-IIBロケット」は、国際宇宙ステーションへ物資を届ける、日本の補給機HTV(H-II Transfer Vehicle)の打ち上げに使用します。
「H-IIBロケット」は液体燃料を使った2段式のロケットで、第1段の直径が5.2メートル、全長は57メートル、総重量は531トンで、日本で開発したロケットの中では最大の大きさです。機体は、強度を確保したまま軽量化をはかるために、アルミニウム合金と炭素繊維強化プラスチックが使用されています。
第1段目の機体には、液体酸素と液体水素を推進剤として使用する「LE-7A型ロケットエンジン」をクラスター化して2基搭載しています。第2段目の機体には、液体酸素と液体水素を推進剤として使用する「LE-5B-2型ロケットエンジン」を1基搭載しています。固体ロケットブースタは、H-IIAロケットと同じものを4本装着します。ロケット先端部分の「衛星フェアリング」と呼ばれる部分には、打ち上げ時の振動や大気圏を抜けるまでの空気抵抗、空力加熱から衛星を保護するためのカバーが取り付けられています。
「H-IIBロケット」の打ち上げ
「H-IIBロケット」の初号機は、2009年9月11日に種子島宇宙センターから打ち上げられました。「H-IIBロケット」の打ち上げと「日本の補給機HTV」の国際宇宙ステーションへの接続は無事成功しました。
「H-IIBロケット」の打ち上げ成功により、日本の補給機HTVの軌道に16.95トンを打ち上げるロケットの能力と正確に予定の軌道にのせる高い打ち上げ技術が実証されました。また、宇宙空間において補給機HTVを細かく制御して国際宇宙ステーションに確実に接続する技術も実証されました。
「H-IIBロケット」の打ち上げは、2011年1月の2号機から2016年12月の6号機まで、すべての打ち上げが成功し、宇宙ステーション補給機「こうのとり」による国際宇宙ステーションへの物資の輸送に貢献しています。