名古屋市科学館の展示室にある「大きなおわん」の前で、遠くに離れた友達とお話してみよう!

名古屋市科学館は、ギネス世界記録に認定された世界最大の直径35mのドームに設置されたプラネタリウムを始め放電ラボや極寒ラボなどの大型展示が目を引きますが、その他の展示物も200点以上もあります。

名古屋市科学館の理工館2階は、「不思議のひろば」という展示テーマで展示品が配置されています。この展示室では、「みる・きく・さわる・うごかす」といった体験を通して、科学の不思議さや楽しさを知ることができます。

理工館2階の「音のふしぎ」ゾーンには、「パラボラ」という大型の展示品があり、遠く離れた向かい合う2つの「大きなおわん」の一方で話しかけると、遠く離れたもう一方のおわんの前では、すぐそばで、お友達が話しているように聞こえます。

直接、お話をしても聞こえないのに、「大きなおわん」に話しかけると伝わるなんて不思議ですね。「大きなおわん」はパラボラ集音機と呼ばれていて、音を集めて遠くに伝えるものです。

理工館2階の「音のふしぎ」ゾーンにある「パラボラ」という展示品

理工館2階の「音のふしぎ」ゾーンには、壁に向かい合うように「大きなおわん」のようなものが設置してあります。「大きなおわん」は、「パラボラ集音器」と呼ばれるものです。

「大きなおわん」の前で「小さな声」で話しても、反対側の「大きなおわん」の前のお友達によく届くのは、音が拡散しないように反射させることができるからです。

どんなに大声を出しても、100メートル離れた人に生の声を伝えることは容易ではありません。音(声)が四方八方に拡がっていってしまい、相手にとどかなくなってしまうためです。また、自分の手を口もとに寄せ、メガホンのようにして声を出すと、相手によく声が伝わることも知られています。つまり、そのままでは拡がってしまう音を集めて、ある方向へ進むようにすることができれば、音を効率的に伝えることができます。それがパラボラの原理です。パラボラとは、数学の放物線のことです。
ここから先は、すこし進んだ数学のおはなしです。中学校3年で2次関数の勉強をします。この2次関数をグラフに書き込むと、その曲線が放物線になることは、皆さんも知っていることでしょう。この放物線の内側に任意の点Aをおきます。ここからY軸と平行に直線lを引き、放物線との交点Bを定めます。点Bで放物線の接線mを引き、この接線と直交して点Bを通る線nを引きます。さらに、この線nを軸として線lと対称な線l’を引き、Y軸との交点をCとします。すると、最初に定めた点Aをどこにとっても、Y軸上の点Cは必ず同じ位置にくるのです。この点Cを、放物線の焦点と言っています。つまり、放物面を作って、その軸に対して平行に進んできた音を受けると、放物面で反射して、すべて一点に音を集めることができるわけです。また、逆に、焦点の位置から放物面に向かって発した音は、放物面で反射して、放物面の軸の方向に平行に進んでいきます。こうして、四方に拡がる音や電波を集めて一カ所に届けることができるのです。このためパラボラは、衛星放送の受信アンテナの他、国際電話の送受信にも使われています。
展示品のパラボラでは、小さいリングで焦点の位置を示しています。ここで小さな声を出してみましょう。反対側のパラボラのリングの位置にお友達の耳を近づければ、びっくりするほどよく聞こえることが分かります。
ところで、展示室のパラボラとパラボラの間に障害物(たとえば、他の来館者)があっても、あまり会話に影響がないのはなぜでしょうか。声のように、周波数の低い波(波長の長い波)は障害物の背後に回り込む性質があります。ですから障害物があっても、回り込んだ波が受信側のパラボラに向かい、声が届くことになるのです。この回り込む性質のことを回折と言っています。しかし、周波数の高い(波長の短い)電波の場合は、そうはいきません。ラジオの電波に比べ周波数の高いテレビの電波が、山に隠れた地域に届きにくいこともこの理由によるものです。
(名古屋市科学館公式ホームページの展示品解説より)