名古屋市科学館は、ギネス世界記録に認定された世界最大の直径35mのドームに設置されたプラネタリウムを始め放電ラボや極寒ラボなどの大型展示が目を引きますが、その他の展示物も200点以上もあります。
名古屋市科学館の理工館5階は、「物質・エネルギーのせかい」という展示テーマで展示品が配置されていて、暮らしを支える材料、エネルギー、物質を構成する原子・分子について様々な視点で紹介されています。
名古屋市科学館の理工館5階の「材料大集合」ゾーンには「金属疲労」という展示品があります。この展示品では、あなたがハンドルをまわすと、6種類の金属板が振動し、金属板に繰り返し力を加えることによる「金属疲労」の実験ができるものです。
金属が疲労すると何が起こるのでしょうか?金属は繰り返し力を加えられることにより、その力に耐えられなくなって、やがてちぎれてしまうのです。あなたも金属疲労による「金属の破断」を体験してみませんか。ただし、金属が破断するまでには何万回という振動が必要で、金属の種類によっても「金属の破断」までの振動回数が大きく異なりますので、「金属の破断」が見られるのは運がいい時です。
理工館5階の「材料大集合」ゾーンの「金属疲労」という展示品
丈夫な金属でも繰り返し力が加わると、ちぎれてしまいます。これを「金属疲労」といいますが、名古屋市科学館では、「アルミニウム」「鉄」「銅」「真鍮」「リン青銅」「ステンレス」の6種類の金属に金属疲労を起こさせて、「金属の破断」を体験できる展示品があります。
「金属疲労」という展示品では、あなたがハンドルを回すと、6種類の金属板が振動します。これは実際に、金属板を何回も繰り返し振動させ、つまり繰り返し力を加え、金属疲労をおこさせる実験装置です。6種類の金属が破断するまでにそれぞれ何万回(?)振動させたかをくらべてください。「リン青銅」と「ステンレス」はなかなかちぎれませんね。
材料が繰り返し力を受けることで強度が下がる現象を「疲労」といいます。金属の場合は「金属疲労」として一般に知られていますが、他の材料でも起こり得る現象です。
一口に材料の強さといっても、硬いとか壊れないというような機械的強さ、薬品やさびなど腐食に対する強さなどがあります。
さらに機械的強さには、引っ張りに対する強さ、圧縮に対する強さ、衝撃に対する粘り強さ、硬さ、低温・高温環境の下での強さなど、さまざまな強さがあります。しかしながら一般的に強さ・強度というときは、「引張強さ」のことを指します。金属は引張強さが大きな材料です。例えば鉄鋼の引張強さはガラスや木の10倍ほど、コンクリートの500倍ほどです。
それでも金属を大きな力で引っ張ると壊れますが、その壊れるか壊れないかぎりぎりの最大の力が「引張強さ」の値となります。
【金属疲労】
ところが、引張強さよりはるかに小さな力でも、繰り返し力が働くと金属が破壊されてしまうことがあり、「金属疲労」とよばれています。
覚えていらっしゃる方も多いと思いますが、1985年に日本航空のジャンボ機が群馬県の御巣鷹山に墜落して大惨事となりました。このとき飛行機の圧力隔壁(乗客室と後方の尾翼を仕切る壁)が金属疲労により破壊され、破片が尾翼を破壊して操縦不能になったことが墜落の原因でした。その飛行機は事故の7年前に着陸時にしりもち事故をおこしていたのですが、修理ミスで小さな亀裂が生じていました。圧力隔壁は、上空では外側が低い気圧になるので客室側から圧力を受けます。飛行するたびにそうした力が繰り返し作用して、亀裂が大きくなっていったのです。
金属疲労は、金属材料に微小な亀裂を生じ、繰り返し力を受けることでその亀裂が次第に大きくなって破壊されると考えられています。そしてその破壊された面を肉眼で観察すると、亀裂の起点を中心に同心円状の線(貝がら模様とかビーチマークとよばれる)が見られることが多いです。また走査電子顕微鏡で観察すると、細かい連続した縞模様が見られ、縞の数は繰り返しを受けた力の回数に相当します。
(注1)金属疲労は学術用語ではありません。上述の事故で金属疲労ということばで報道され、広く使われるようになりました。
(注2)文中の「力」は「応力」を意味しています。応力とは、単位面積あたりの力(外から働く力に対し生じる抵抗する内力)のことです。
(名古屋市科学館公式ホームページの展示品解説より)