名古屋市科学館で音を集めることができる「音のフレネルレンズ」を体感しよう!

名古屋市科学館は、ギネス世界記録に認定された世界最大の直径35mのドームに設置されたプラネタリウムを始め放電ラボや極寒ラボなどの大型展示が目を引きますが、その他の展示物も200点以上もあります。

名古屋市科学館の理工館4階は、「科学原理とのふれあい」という展示テーマで展示品が配置されています。この展示室では、波動、電磁気、運動などについて、自然界の原理や法則を体験しながら知ることができます。

理工館4階の「実験のアトリエ」ゾーンには、「音のフレネルレンズ」という大型の展示品があり、同心円状に隙間の空いた板の裏側から出た音が、板の表側の「ある場所」では大きな音で聞こえることを体感できます。板で音がさえぎられるのに、大きな音で聞こえる場所があるなんて不思議ですね。

音を集める方法としてよく知られているのは「おわん型」の集音機で、理工館2階「不思議のひろば」の「おとのふしぎ」ゾーンに「パラボラ」という展示品があり、巨大なパラボラ集音機を利用して遠く離れた人との会話を体験できます。

理工館4階の「実験のアトリエ」ゾーンにある「音のフレネルレンズ」という展示品

理工館4階の「実験のアトリエ」ゾーンにある「音のフレネルレンズ」という展示品は、同心円状に隙間のあいた大きな板で、音を集められることが体験できます。

音を集めることができるのは、回折や干渉という波の性質によるものです。音は空気の波で、同心円状に隙間のあいた大きな板を音が通過するときに、回折が起こり音が板の裏側に回り込みます。同心円状に隙間のあいた大きな板を通過した音の波は、干渉という波の性質によって、強め合ったり弱めあったりします。

ちょうど波が強め合う場所に耳を近づけると音が大きく聞こえます。どの場所で音が大きく聞こえましたか。同心円状に配置された板の中心が最も音が大きく聞こえる場所ではなかったでしょうか。

音が大きく聞こえる場所は、音源が板に隠れて見えない場所ですが、同心円状に隙間のあいた大きな板を通過した音は、回折と干渉により、同心円状の板の中心に音が大きく聞こえる場所をつくったのです。

展示品で音を集めることができるのは、波の基本性質である『回折』と『干渉』を上手く利用しているからです。『回折』は波が障害物を越えて回り込む現象です。対面する2人の間に壁を立てても、壁の横から音は回り込むことができるので2人は話をすることができます。この音の回り込みが『回折』です。『干渉』は複数の波が重なりあうことで生じる現象です。波と波が重なりあうことで、時には強め合い、時には弱め合います。
展示品は同心円状に隙間が開いていて一部の音だけが通過できるようになっています。その時、重なったら強め合うような波のみを通過させれば、音を集めることができます。そのように計算されて穴が開けられたのが展示品の大きな板です。
干渉のさせ方によって、音は大きくすることも小さくすることもできます。2つの波の山と山、谷と谷を重ね合わせれば音は大きくなります。山と谷、谷と山を重ねるとお互いに打ち消し合ってしまい音は小さくなります。上手に重ね合わせれば音は消えてしまうほどです。展示品では、音源から空間に広がって同心円状の板のいろいろな隙間を通って回折した複数の音の波が、音源と板をはさんだ反対側のある一点に、 山と山、谷と谷が重なり合うように設計されています。音源から様々な道筋を通り、反対側のある一点にいたる様々な波が、どれも山と山、谷と谷が重なりあうようにするためには1つの法則があります。それは、いろいろな道筋があろうとも、それぞれの道のりの差は、その音の波長の整数倍になっているということです。道のりの差が波長の整数倍であれば山と山、谷と谷が重なり合って音は大きくなります。もし、整数倍でない波、特に[整数+0.5]倍の波があると音を打ち消してしまいます。同心円状の板の部分は、[整数+0.5]倍の波がやってくるところなのです。ですから板を張って音が来ないようにしてあるわけです。
フレネルレンズとはレンズの厚みを薄くするために工夫されたレンズで、フランスの物理学者オーギュスタン・ジャン・フレネルによって灯台用のレンズとして開発されました。フレネルレンズは正面から見たときに同心円状に見えるのが特徴で、厚みが薄いことから携帯用のレンズに使われてもいます。展示品は音を集める機能があり、形状が同心円をしていることから、音のフレネルレンズと命名されました。
音のフレネルレンズは平成8年度東京都理科教育研究会物理専門委員会の波動・電磁気グループが電波レンズに着想を得て、東京都立高校教諭の田原輝夫さんを中心に研究開発が行われたものです。
(名古屋市科学館公式ホームページの展示品解説より)