名古屋市科学館で地球科学の展示があるのは、生命館の2階「地球のすがた」ですが、実は理工館6階の「最先端科学とのであい」の「地下に挑む」ゾーンにもお宝展示品があります。
名古屋市科学館の理工館6階にある、触れる大きな「隕石」の展示品を紹介したのですが、同じ場所に水晶やエメラルド、そしてダイヤモンドなどの「宝石の原石」を堪能できる展示もあるんです。
理工館6階「最先端科学とのであい」の「地下に挑む」ゾーンの展示品
「地下へ挑む」ゾーンは、地球の構造や地球を構成する物質を解き明かす展示品で構成されています。
「地下へ挑む」ゾーンで最も人気のある展示品は、「ボーリングコアステーション」で、地下から取り出したボーリングコアを触りながら、ボーリングコアの分析が体験できる展示品です。
「地下へ挑む」ゾーンの奥の部屋は、「地圏(地球の地下深く)」についての展示品があり、地球の表面に近い地殻で成長する「宝石の原石」の展示品があります。岩石の隙間で成長する宝石の姿を見ることができます。
「地下へ挑む」ゾーンの「地圏−地殻」コーナー
「地下へ挑む」ゾーンの「地圏−地殻」コーナーでは、ショーウインドウのようにディスプレイされた岩石や鉱物標本を見ながら、大陸地殻と海洋地殻の違いを知ることができます。地圏のうち最も外側を薄い皮のように覆っているのが「地殻」です。地殻は、さらに大陸地殻と海洋地殻に分かれています。大陸地殻は地圏の中では一番軽いので、海に浮かぶ氷山のように高い出っ張りをつくり、海面の上に顔をだして「陸地」となっています。
大陸地殻は複雑
大陸地殻は、大気と触れているので、風雨にさらされて浸食されたり、流されて堆積したり、再び熱や圧力を受けることで様々な岩石に変わります。それでも、海洋地殻より軽い岩石ばかりなので、海洋地殻の下に沈むこんでしまうことはありません。このため、大陸地殻には古いものから新しいものまで様々な種類の岩石が蓄積されて、バラエティーに富んでいきます。
大陸地殻の中でうまれる宝石たち
かつて、水晶は氷が石になったものだと信じられていましたが、氷が水晶に変わるはずがありません。しかし、水晶が作られるのには、水が関係しています。 水晶は「シリカ(二酸化ケイ素)」の結晶です。シリカは、ほとんどの岩石に含まれる成分ですが、高温の地下水(熱水)には溶けやすいのです。ですから熱水が冷やされたとき、溶けきれなくなったシリカが結晶となります。
このように、地下水が岩石を少しずつ溶かしては、別の場所で再び沈殿させる作用が、地下環境における物質移動の重要な役割を担っています。様々な岩石がある大陸地殻では、様々な成分が地下水に溶け込み、様々な鉱物の結晶が作り出されています。
海洋地殻はシンプル
大陸地殻に比べると、海洋地殻はシンプルです。陸地から離れた海洋底は、どこも玄武岩ばかりで、その上を生物の死骸などが降り積もった堆積物が覆っているだけです。しかも、古い時代の玄武岩はありません。
海洋地殻がつくられる場所は、海底火山の列「中央海嶺」です。そこでは、海洋地殻が引き裂かれ、その裂け目を埋めるために熱い地下物質が上昇してきます。海底下数十kmのところに上昇してきたマントル物質(カンラン岩)は少しだけ融けて、玄武岩質マグマとなり、海底に流れ出します。 こうして中央海嶺でできた玄武岩が海洋地殻となり、プレート運動により移動し、海溝に沈んで行きます。
海洋底では、「海底熱水鉱床」、「マンガンノジュール」、「コバルト・リッチ・クラスト」の3種類の鉱物資源が見つかっています。
「海底熱水鉱床」は、チムニーと呼ばれる熱水噴出孔付近に沈殿した銅、鉛、亜鉛、金、銀などを含む金属硫化物鉱床です。
「マンガンノジュール」は、海底堆積物中に半分くらい埋没した状態で見つかる直径2〜15cmほどの球形あるいは楕円状の塊で、鉄やマンガンのほか、ニッケル、銅、コバルトなども含みます。
「コバルト・リッチ・クラスト」はマンガンノジュールと似ていますが、コバルトを多く含み海山上部の玄武岩を覆う厚さ数mm〜数10cmの殻のようになっています。
さらに、熱水噴出孔周辺や海底下地下深部などには、これまで知られていなかったような生物が見つかっています。未知の有用な微生物などが見つかる可能性もあり、海洋底はまさに資源の宝庫といえるでしょう。
(名古屋市科学館公式ホームページの展示品解説より)